保険金支払時に保険会社から税務署に支払調書が提出される?

保険金支払時に保険会社から税務署に支払調書が提出される?

生命保険の死亡保険金や満期保険金、解約返戻金を受け取った場合、確定申告が必要となる場合があります。税務署は保険会社からの保険金や満期保険金の支払いを把握しているのでしょうか?

実は、保険会社から税務署に死亡保険金や満期保険金、解約返戻金などの支払データとして支払調書が提出されています。

では、どのような条件で支払調書は保険会社から税務署に提出されるのでしょうか?また、支払調書にはどのようなデータが記載されているのでしょうか?

今回は法定調書の1つである支払調書について解説します。


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目次

1. 法定調書・支払調書とは?

法定調書とは、所得税法、相続税法などの規定により税務署に提出が義務付けられている資料で、平成29年4月現在、「給与所得の源泉徴収票」など59種類の法定調書があります。法定調書には、源泉徴収票や支払調書があります。

支払調書とは、特定の支払いをした事業者が、支払の内容・明細を記載して税務署に提出する書類のことです。税務署は、支払調書により、法人税や所得税が正確に申告されているかを確認することができます。

生命保険会社や損害保険会社が税務署に提出する支払調書には、以下のようなものがあります。

・生命保険契約等の一時金の支払調書
・生命保険契約等の年金の支払調書
・損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書
・損害保険契約等の年金の支払調書 など

 

 

2. 生命保険会社の支払調書提出基準

生命保険会社は、保険金等を支払う際に支払調書を税務署に提出するよう定められています(所得税 法第225条、相続税法第59条)。しかし、全ての契約に対して支払調書を提出しているわけではありません。

では、どのような場合に保険会社は支払調書を提出する必要があるのでしょうか?支払調書の提出が必要な場合は以下の通りです。

・1回の支払金額が100万円を超える保険金、解約返戻金等の一時金を支払う場合※1
・年金支払額が年間20万円超える場合※1 ※2
・死亡による契約者の変更の場合(平成30年1月1日以降)

※1保険金、年金ともに支払金額であり、課税 所得金額ではありません。
※2契約者と年金受取人が異なる場合等は 支払金額にかかわらず支払調書が提出されます。

平成30年1月1日より、新たに「死亡(相続)による契約者の変更の場合」に支払調書の提出が必要となりました。

 

 

3.支払調書に記載されている事項

保険会社が提出する支払調書には、どのような事項が記載されているのでしょうか?支払調書に記載されている事項は以下の通りです。

  • 受取人氏名、住所、個人番号(マイナンバー)
  • 契約者氏名、住所、個人番号(マイナンバー)
  • 被保険者氏名、住所
  • 保険金額等(又は満期金額、解約返戻金額)
  • 保険料総額(既払込保険料総額)
  • 保険事故発生日、保険金等の支払日

※平成30年1月1日以降の支払調書に下記事項が追加となります。

  • 支払時の契約者の直前の契約者の氏名・住所
  • 契約者変更の回数
  • 支払時の契約者の既払込保険料

生命保険支払調書(平成30年1月1日以降)

 

平成30年1月1日から新設された「保険契約者等の異動に関する調書」に記載される事項は以下の通りです。

  • 死亡した契約者の氏名・住所・死亡日
  • 新契約者の氏名・住所
  • 解約返戻金相当額
  • 既払込保険料
  • 死亡した契約者の既払込保険料

保険契約者等の移動に関する調書(平成30年1月1日)
 

4. 支払調書変更の目的とは?

平成30年1月1日以降の名義変更(契約者変更)については、支払調書の提出ルールと記載内容の変更がありました。なぜ変更されたのでしょうか?

今までの支払調書では、下記のような問題があり、相続税や贈与税の申告・課税漏れが発生していました。

  • 契約者(保険料負担者)と被保険者が同一人でないケースで契約者が死亡し名義が変更された場合、保険金が支払われたわけではないため支払調書が提出されず、税務署がこれを把握できない。
  • 名義変更後に保険金や満期保険金が支払われた場合、支払調書は支払時点での契約内容で作成されるため、契約途中で名義変更があったことを税務署が把握できない。

これまで把握できなかった名義変更前後の保険料負担者を把握することで相続税や贈与税の課税もれを防ぐために支払調書が改定となりました。
参考:生命保険の契約者変更(名義変更)した場合の税金は?

 

 

まとめ

生命保険の死亡保険金や解約返戻金、満期保険金の支払いについて、保険会社から支払調書が提出されている場合、税務署はその内容を把握しています。更に支払調書の改定によって、今までは把握できなかった契約者変更前後の保険料負担者も把握できます。

税務署は支払調書により確定申告がされているかどうかを確認することができます。

生命保険の死亡保険金や満期保険金、解約返戻金などに対する課税は、一般の方には複雑で、確定申告がもれてしまう可能性があります。しかし、相続税や贈与税などの申告もれは、知らなかったでは済まされず、無申告加算税などの重いペナルティーが課せられます。

余分な税金を支払うことを避けるためにも保険金や年金、満期保険金、解約返戻金などを受け取った場合には、確定申告の必要性をご確認頂ければと思います。

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