国民年金等の公的年金制度は、保険料を支払っても将来、年金をもらえない可能性があるため保険料を支払いたくないと、未納状態の方もいます。保険料未納の選択は正しいのでしょうか?
そもそも、公的年金は保険料を何年間払えば、いつから、いくら受け取れるものなのでしょうか?また、公的年金のメリットはないのでしょうか?
今回は、個人開業医の方の公的年金制度について解説します。どのような保障(給付)があり、どの程度の保障(給付)内容なのかを知り、民間の個人年金保険との関係を知って頂ければと思います。
目次
1.公的年金制度とは?
公的年金制度には、国民年金と厚生年金がありますが、第1号被保険者である個人開業医の方は、国民年金のみとなります。
日本の年金制度は、2階建や3階建といわれていますが、第1号被保険者である個人開業医の方については、基礎年金のみの1階建てになります。
2.国民年金とは
国民年金は、20歳以上から60歳未満で日本国内に住所を有する全ての人が加入する制度です。老齢、障害、死亡に関して、基礎年金が支給されます。
保険料は定額です。老齢基礎年金は65歳から支給され、保険料を納付した期間に応じて年金額が決定します。20歳から60歳の40年間保険料を納付していれば、満額の年金を受け取ることができます。
3.個人年金保険にはない国民年金のメリット
それではここから、国民年金のメリットについてご紹介します。国の制度ですので、民間の個人年金保険にはないメリットがあります。
3-1.保険料は全額所得控除
国民年金の保険料は定額で月16,490円(平成29年度)となっています。その全額が所得控除(社会保険料控除)の対象となり、その分所得税や住民税が安くなります。つまり、将来のための積立をしながら、節税になるという大きなメリットがあります。
上記の金額は1人分の保険料で、配偶者も第1号被保険者の場合には、2人分の保険料を支払う必要があります。配偶者や家族の保険料についても、所得控除を利用することが可能です。
民間の個人年金保険や生命保険にも保険料控除がありますが、支払った保険料の全額が控除されるわけではなく、支払った保険料の一部が控除の対象となります。よって、保険料全額が所得控除になる国民年金の方が節税効果は高くなります。
また、保険料の支払方法は、毎月支払う方法以外に前納という前払い制度があります。保険料の前払い制度には、2年前納(4月~翌々年3月分)、1年前納(4月~翌年3月分)、6ヶ月前納(4月~9月分、10月~翌年3月分)、当月末振替(早割)の方法があります。
保険料を前納(前払い)すると、割引が適用され、毎月支払うよりも割安になります。
3-2.老齢基礎年金は終身年金
65歳から支給される老齢基礎年金は終身年金です。終身年金とは、年金を受け取る方が亡くなるまで支給され続けるという意味で、老齢基礎年金のメリットの1つです。
参考:「確定年金」「終身年金」「有期年金」の違いとは?
現在の年金額は、20歳から60歳までの40年間保険料を支払った場合、満額で779,300円(平成29年4月分から)です。
例えば、65歳で年金を満額受け取り始めて、男性の平均寿命である80歳まで生きたとしたら、779,300円×15年=11,689,500円が受け取れることになります。仮に100歳まで生きたとしたら100歳で亡くなるまで老齢基礎年金が支給されます。
つまり、長生きすればするほど支払った保険料よりも受け取れる年金額が多くなるということになります。
一方、民間の個人年金保険については、終身年金もありますが、ほとんどが、年金が支払われる期間が10年や15年等と決まっている確定年金ですので、長生きしたからといって老齢基礎年金のように沢山年金が受け取れるわけではありません。
また、国民年金(基礎年金)の給付は半分が税金で賄われています。平成21年度から国庫負担割合は、3分の1から2分の1になっています。基礎年金は国庫負担がある分、保険料が低く抑えられており、その点でもメリットがある制度となっています。
3-3.公的年金には3種類の給付がある
公的年金と聞くと、65歳から受け取れる老齢基礎年金をイメージする方が多いのですが、老後に受け取れる年金以外にも障害や亡くなった場合に支給される年金もあります。つまり、公的年金には、「老齢給付」「障害給付」「遺族給付」の3種類の給付があります。
「老齢給付」以外にも万が一の保障がある点は、公的年金の大きなメリットです。
3-3-1.障害基礎年金
国民年金には、老齢基礎年金以外に病気やケガで障害が残ったときに支給される障害基礎年金があります。障害等級の1級または2級に該当すると支給されます。支給される年金額(平成29年4月分以降)は以下の通りです。
【障害基礎年金額】
1級:779,300円×1.25+子の加算
2級:779,300円+子の加算
【子の加算】
第1子・第2子:各224,300円
第3子以降:各74,800円
※子とは次の者に限ります。
18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
20歳未満で障害等級1級または2級の障害者
【支給例】
障害等級1級で18歳未満の子供2人がいる場合
779,300円×1.25+224,300円×2人=974,125円+448,600円=1,422,725円
3-3-2.遺族基礎年金
また、亡くなった場合には、遺族基礎年金が子のある配偶者または子に支給されます。支給される年金額(平成29年4月分以降)は以下の通りです。
【遺族基礎年金額】
779,300+子の加算
【子の加算】
第1子・第2子:各224,300円
第3子以降:各74,800円
※子とは次の者に限ります。
18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
20歳未満で障害等級1級または2級の障害者
【支給例】
配偶者と18歳未満の子供2人の場合
779,300円+224,300円×2人=779,300円+448,600円=1,227,900円
3-4.公的年金受取時の税金面での優遇措置
公的年金は年金受取時に税制上、優遇措置があり、民間の個人年金保険よりも税金面で有利になっています。
例えば、老齢基礎年金の場合、公的年金等控除があります。また、遺族基礎年金、障害基礎年金については、年金を受け取っても非課税となっています。
参考:公的年金等の雑所得扱いのメリットとは?
民間の個人年金保険には上記のような税制上の優遇措置はなく、年金は雑所得として課税されます。但し、死亡保険金については、以下の非課税枠(相続税法第12条)があり、非課税限度額までは相続税が課税されません。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
3-5.公的年金はインフレに強い
公的年金には物価スライド制度があり、物価や賃金の変動によって、支給額が変動します。つまり、物価や賃金が上がった場合には、年金額も上がるというメリットがあります。
一方、民間の個人年金保険等には原則、年金額が物価に合わせて変動する仕組みはありませんので、契約時に決めた年金額を受け取ることになります。
仮に契約時と比べて年金受取時に物価が10倍になっていたとしたら、受け取れる年金の価値は10分の1になってしまいます。例えば、年間500万円受け取れる個人年金保険に加入していた場合、実質的には50万円しか受け取れないことになってしまいます。
公的年金には物価スライドという制度がありますが、平成16年にマクロ経済スライドが導入されて、物価や賃金が上がるほど年金額が上がらないような調整がされるようになりました。
また、平成30年からは、マクロ経済スライド強化され、更に年金額は上がりにくい仕組みになります。しかし、物価スライドがない民間の個人年金保険に比べると、公的年金にはインフレに強いという大きなメリットがあるといえます。
参考:インフレのリスクとは?
まとめ
そもそも、日本は国民皆年金制度ですので、何らかの年金制度に加入する必要があります。つまり、強制加入の制度なので、国民年金の保険料を支払わないという選択肢はありません。
保険料が未納の場合、財産の差し押さえなどの強制徴収が実施される可能性があります。特に所得が高い方は、強制徴収の可能性が高くなります。
日本年金機構によると、2016年度は控除後所得が350万円以上かつ未納期間が7ヶ月以上の方を対象に強制徴収を実施しています。
強制加入の制度であれば、しっかりと保険料を支払い、メリットを最大限活用すべきではないでしょうか?
但し、上記の国民年金の保障(給付)内容では、全く保障が不足することが明らかです。遺族保障(遺族基礎年金)については、子供がいないと年金を受け取る権利さえありません。
また、65歳から支給される老齢基礎年金についても1人約6.5万円(月額)で、夫婦で約13万円(月額)ですので、老後資金の準備についても何らかの自助努力が必要であることは間違いありません。
老後の保障については、どのような自助努力が必要なのか、どのような制度を利用するべきなのか、また、遺族保障については、どのような民間保険を活用すべきなのかをこれから解説していきたいと思います。
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