国民年金基金は危ない?|破たんリスクやインフレリスクについて解説

国民年金基金は危ない?|破たんリスクやインフレリスクについて解説

国民年金基金に加入しようと検討しているが、リスクについても確認したい」と考える方も少なくないでしょう。

国民年金基金は公的な年金制度といっても全くリスクのない制度はありません。

結論から申し上げると、基金には破たんリスクとインフレリスクがあります。

今回は、国民年金基金に存在するリスクについて解説したいと思います。

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目次

国民年金基金とは?

まずは、簡単に国民年金基金制度について解説します。

会社員等の給与所得者の公的年金には、厚生年金や厚生年金基金があり、3階建ての制度になっています。

一方、自営業者などの第1号被保険者の場合、国民年金のみだと1階建ての制度

 

そこで、会社員等の給与所得者との年金額差を解消するために国民年金基金制度が平成3年4月に創設され、国民年金と国民年金基金制度を合わせて2階建ての制度になりました。

国民年金基金は、国民年金法の規定に基づく公的な年金です。

国民年金基金制度は、国民年金(老齢基礎年金)とセットで、自営業者など第1号被保険者の老後の所得保障的な役割を担う制度。

 

なお、国民年金基金の加入条件や加入資格については、下記記事をご参照ください。

【国民年金基金】加入の条件や資格を解説|加入できる年齢は何歳から何歳まで?

 

 

破たんリスクがある?|積立不足問題

実は、国民年金基金には積立不足問題が存在します。

 

積立金の運用状況は悪く、加入者に約束する予定利率は、以下の通り段階的に引き下げられてきました。

5.5%(平成3年)⇒ 4.75%(平成7年以降)⇒ 4%(平成12年以降)⇒ 3%(平成14年以降)⇒ 1.75%(平成16年以降)⇒ 1.5%(平成26年以降)

 

しかし、予定利率が下げられても加入時の予定利率は保証。

例えば、予定利率が5.5%の時代に基金に加入した加入者は、予定利率が1.5%に下がった現在も5.5%の予定利率が保証されています。

よって、実際の運用利回りが、高い予定利率を下回ってしまうと逆ザヤが発生し、積立不足が発生

 

実際、令和元年度の責任準備金(すべての加入員・受給者等の将来給付のために必要な原資として保有すべき額)53,058億円に対して、純資産は38,280億円。

実質不足額は14,778億円と巨額の積立不足が発生しています。
出典:国民年金基金財政の推移

積立不足の状況が悪化すれば、その解消のため、約束している将来の年金額が引き下げられる可能性があります。

 

また、国民年金基金は積立方式で、加入者が積み立てた掛金を年金で受け取ることになっていますが、実はその積立金は加入者ごとに明確に区分されていません

財政状況によっては、予定利率が高い加入者の積立不足を他の加入者の掛金で穴埋めするという事態が発生する可能性もあります。

 

ただし、現在の国民年金基金の積立不足が即制度の破たんにつながるわけではありませんし、今後の運用環境がどう変わっていくかは誰にも分かりません。

積立不足が早期に解消される可能性もゼロではないでしょう。

 

加入者が減少している

国民年金基金の問題は積立不足だけでなく、加入者についても下記の通り、減少傾向です。

国民年金基金の加入者数

  • 平成15年度末:789,178
  • 令和元年度末:348,658

出典:現存加入員数(国民年金基金・公式サイト)

 

加入者は減っていますが、国民年金基金は賦課方式の国民年金とは違い、積立方式の年金制度です。

よって、新しい加入者が減少したとしても即、制度の破たんに大きく影響するということはないでしょう。

 

破たんしたらどうなる?解散したら掛金は返金される?

仮に国民年金基金が破たんしたら、どうなるのでしょうか?掛金は返金されるのでしょうか?

国民年金基金が破たんした場合、基金の解散時点での残余財産額を加入員や受給者等で分配します。

よって、下記の通り、返金される額がそれまでに支払った掛金額を下回ることがあるとしています。

基金が解散するような場合、積立不足などの問題が深刻になっていることが予想されるので、返金される額はそれまでに支払った掛金額を下回る、つまり元本割れの可能性が高いでしょう。

基金は公的な制度として、国民年金法に基づきその設立から運営について厚生労働省から指導、監督を受け、代議員会での議決を経て運営されております。

また基金の財政状況を毎年チェックし、健全な運営に努めております。

基金の財政状況は決算書に記載されていますので、随時閲覧できます。

仮に当基金が解散した場合は国民年金法に基づき、基金の解散時点での残余財産額を加入員および受給者等で分配することとなっており、それまで支払われた掛金額を下回ることがあります。

なお、分配される額を国民年金基金連合会へ移管して、将来年金として受け取ることができるような措置を講じております。
出典:国民年金基金公式サイト

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インフレのリスクがある

国民年金基金は確定年金で、加入時に受け取り時の年金額をシミュレーションすることができます。
参考:国民年金基金の年金額をシミュレーション|いつまで、いくら受け取れる?

加入期間中に受け取れる年金額が変動しない点は大きなメリットの1つですが、インフレに弱いのが大きなデメリットの1つ。

 

公的年金のように物価や給与等にスライドしないので、インフレにより物価が上昇した場合には、受け取る年金額が実質的に目減りする点には注意が必要。

例えば、インフレにより物価が2倍になったにもかかわらず、年金額が上がらなければ、年金額は実質的に2分の1に目減りすることになります。

インフレとは?

インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの値段(物価)が上がり、通貨(お金)の価値が下がることをいいます。

お金(通貨)の価値は一定ではなく、その時々の物価の状況により変動します。

参照:インフレのリスクとは?|生命保険はインフレに弱い?

 

 

まとめ

国民年金基金は第1号被保険者の年金額不足を補う公的な年金制度。

破たんリスクがあるといっても、民間の生命保険会社と比べると安心感は高いといえます。

「国民年金基金には破綻リスクがあるから生命保険会社が販売している個人年金保険に入るべき」というような間違った発想にならないようにお気を付けください。
参考:個人年金保険への加入前に押さえておくべき3つのデメリットとは?

 

また、インフレにより実質的に年金額が目減りしていまうリスクもありますが、掛金全額が所得控除の対象で節税になったり、終身年金を選択できるなどのメリットもあります。
参考:国民年金基金は入るべきか?3つのメリットと4つのデメリットを解説

デメリットが存在しない制度はありません。

 

大切なことは、メリットとデメリットについて確認し、どのメリットを重視するかということ。

個人事業主やフリーランスなどの第1号被保険者の年金額が少ないことは明らかで、国民年金基金やイデコなどの上乗せ制度の活用は必須といえます。

ご自身の納得できる公的年金の上乗せ制度を選んで頂ければと思います。