学資保険は満期時にまとまった金額の学資金(満期金)を受け取ることになるので、「税金はどのくらい課税されるのか?」や「確定申告は必要なのか?」と心配されている方もいらっしゃると思います。
実は、学資金の受け取り方によって、課税される税金が異なり、税額も異なります。
今回は、学資保険の受け取り方による課税される税金の違いについて解説します。
目次
1. 学資金(満期金)を一括で受け取る場合
契約者(保険料負担者)が学資金を満期時に一括で受け取る場合、その学資金(満期金)は、「一時所得」に該当し、所得税・住民税の課税対象となります。一時所得の計算式は下記の通りです。
≪一時所得の計算式≫
総収入金額 - 収入を得るために支出した金額 - 特別控除額(50万円限度)
学資保険の場合の一時所得の計算は下記の通りです。
≪学資保険の一時所得計算例≫
学資金(満期金) - 払込保険料総額 - 特別控除額(50万円限度)
上記の一時所得を1/2した額が他の所得と合算されて総合課税されます。よって、一時所得の場合には、受け取る学資金と払い込んだ保険料の総額の差が50万円を超えなければ、課税はされず、確定申告も不要となります。
現在の低い予定利率から考えて、学資金と払込保険料総額の差額(差益)が50万円を超えるような契約は学資金を高額に設定しない限りないでしょう。
実際にある保険会社で学資金1,000万円を受け取るプランを試算してみました。
≪契約例≫
学資保険(無配当) 17 歳満期
契約者:30歳 男性
被保険者(子ども):0歳 男性
基準学資金額:1000 万円
保険期間:17 歳
保険料払込期間:10歳まで
月額保険料:80,100 円
払込保険料総額 :9,612,000円(返戻率:約104%)
解約返戻率(払戻率) = 受取学資金総額 ÷ 払込保険料総額 × 100
1,000万円の学資金を受け取る上記試算例でも学資金と払込保険料総額の差額(差益)は、40万円にもなりません。
上記試算例のように1,000万円の学資金を受け取る場合でも、現在のような低金利下では、差益が特別控除の50万円を超えることはなく、課税されることはありませんし、確定申告も不要です。
2. 毎年学資年金を受け取る場合
学資金を満期時に一括で受け取る場合、学資金は一時所得に該当し、ほとんどの契約で課税されることはなでしょう。
しかし、学資金を年金形式で受け取る契約の場合、学資年金は雑所得に該当し、特に自営業者(個人事業主)の方は、課税されるケースが多くなります。
例えば、子供が大学1年生から4年生までの4年間、契約者(保険料負担者)が毎年年金形式で学資金を受け取る場合、「学資年金」は雑所得に該当します。雑所得の計算式は下記の通りです。
≪雑所得の計算式≫
雑所得の金額 = 総収入金額 - 必要経費
学資年金の雑所得額計算例は下記の通りです。なお、学資保険の場合の総収入金額と必要経費は下記の通りです。
総収入金額:同一年内に受け取る学資年金の額
必要経費:同一年内に受け取る学資年金の額 × 払込保険料総額 ÷ 学資年金受取総額
≪契約例≫
払込保険料総額:360万円
学資年金額:100万円(大学1年~4年までで合計400万円)
100万円 - 100万円 × 360万円 ÷ 400万円 = 10万円
雑所得には一時所得とは違い、特別控除(限度額50万円)がないので、上記10万円がそのまま課税対象額となります。
ただし、年収2000万円以下の給与所得者の方については、給与所得および退職所得以外の他の所得が20万円以下の場合は非課税となるので、上記事例で他の所得がなければ、確定申告は不要ということになります。
一方、個人事業主の方の場合、給与所得者のような制度はないので、上記10万円が事業所得などと合算されて課税されます。
3. 子供が学資金を受け取る場合
上記の2つの事例は、学資金や学資年金を契約者(保険料負担者)が受け取るパターンですが、学資金を契約者(保険料負担者)ではない子供が受け取る場合には、贈与税の課税対象となります。
例えば、学資金として500万円を受け取る下記事例の場合、贈与税の課税対象額は下記の通りです。
≪契約例≫
払込保険料総額:480万円
学資金:500万円
≪贈与税課税対象額≫
500万円 - 110万円(基礎控除) = 390万円
仮に20歳未満の子供や孫を受取人にした場合の贈与税額は53万円となります。上記契約例の学資金を契約者が受け取る場合には、差益(500万円-480万円)が特別控除の50万円以内となりますので、一時所得額は0円となり、課税されることはありません。
4. 一番有利な契約方法は?
上記3つのパターンで最も不利になる可能性が高いのが、贈与税が課税されるタイプです。学資金が大きくなるほど、贈与税額は大きくなります。
そもそも贈与税を払って、学資金を子供や孫に受け取らせる意味はありません。学資金を契約者が受け取って教育費として子供や孫に渡す場合には、都度贈与となり、贈与税が課税されることはありません。
つまり、都度必要な額までの教育費は非課税で子供や孫に渡すことができます。
一時所得パターンと雑所得パターンについては、どちらが有利かは一概には言えません。その理由は、一時所得形式の契約に比べて、学資年金形式の契約の方が一般的に返戻率が高くなるからです。
特に契約者が給与所得者の場合、毎年の差益が20万円を超えなければ課税されないので、返戻率まで考えると、雑所得パターンの方が有利になる可能性があります。
自営業者の場合には、所得税の税率によって有利不利が異なるので、検討が必要です。
5. 支払保険料は保険料控除の対象
なお、学資保険の支払保険料については、一般生命保険料控除の対象となり、年末調整や確定申告の際に所得から控除されます。所得から控除される額は下表(平成24年1月1日以降契約の場合)のとおりです。
参考:個人開業医の方は生命保険料控除を活用すべきか?
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間払込保険料 | 控除額 | 年間払込保険料 | 控除額 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | 12,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超 40,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +10,000円 |
12,000円超 32,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +6,000円 |
40,000円超 80,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +20,000円 |
32,000円超 56,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +14,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 | 56,000円超 | 一律28,000円 |
まとめ
学資保険に課税される税金をまとめると下表の通りになります。
契約形態 | 課税される税金 | |
---|---|---|
契約者(保険料負担者)=受取人 | 一括受取 | 所得税(一時所得) |
年金受取 | 所得税(雑所得) | |
契約者(保険料負担者)≠受取人 | 贈与税 |
学資保険は加入形態や学資金の受け取り方によって課税される税額が大きく異なる場合があります。有利不利については、返戻率と課税される税額の関係も考慮する必要があります。
どの方式で契約するか判断に迷う場合には、専門家に相談することをおすすめします。
- どのような保険を選んだらいいのかわからない
- 今、加入している生命保険が、どのような保障内容になっているか確認してもらいたい
- 見直し方をアドバイスして欲しいが、誰に相談していいか分からない など
保険の選び方や見直し方で悩まれている方は、保険のプロであるFP(ファイナンシャル・プランナー)による無料相談(大阪/兵庫/京都/奈良)をご利用ください。
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